AI関連発明[第9回]:AI関連特許の出願に必要な技術的説明とは?

◆はじめに

AI技術を活用した発明は、特許出願において“技術的説明”が極めて重要です。AIが関与しているからといって、特許庁が自動的に特許性を認めるわけではありません。特に「どのようにAIを使っているのか」「なぜ技術的に意味があるのか」を丁寧に記載する必要があります。

 

 

 

 

 

1. 単なる“AIを使っている”という記載では不十分

「AIを用いて最適化を行う」「AIで画像を分類する」といった表現は曖昧すぎて、技術的説明として不十分です。特許として認められるには、その処理がどのような構成・手順で実現され、従来と比べてどのような技術的効果をもたらすかを説明しなければなりません。

2. 技術的構成とAI処理の関係性を明確に

たとえば、AIモデルがどのようにセンサからのデータを受け取り、処理し、その結果をどのように利用するのか、フローとして明確に説明することが重要です。AI部分が単独で存在するのではなく、システムの中でどう機能しているかを示す必要があります。

3. モデル構成・学習プロセスの概要も必要

ブラックボックス的に“AIが推論する”と書くだけでは不十分です。可能な範囲で、モデルの構成(例:多層パーセプトロン、畳み込みニューラルネットワークなど)、学習済みかオンライン学習か、学習時のデータの特徴などを記載することが望まれます。

4. 入出力データの仕様と前処理/後処理の説明

AI処理の“前”と“後”にどのような処理があるかも技術的構成の一部です。例えば:
– 入力:時系列センサデータ、画像データなど
– 前処理:正規化、ノイズ除去など
– 推論処理:モデルによる出力の算出
– 後処理:出力に基づく制御信号の生成、UIへの通知など
この一連の流れを明確にすることが、審査官の理解を得るうえで極めて重要です。

5. 技術的効果とその構成との対応

AIを導入したことで何がどう改善されたのか、それを支える技術構成が何なのか、対応関係を示すことで進歩性が主張しやすくなります。
例:
– 「従来はしきい値判定による誤報が多かったが、AIにより判定精度が向上し、誤報率が30%改善」
– 「モデル構成を変更することで処理時間を1/10に短縮」
など、定量的な効果と構成要素の因果関係を記載しましょう。

◆まとめ

AI関連発明の特許出願では、従来のソフトウェア特許と同様に「構成」と「効果」の記載が要です。“AIがあるからすごい”ではなく、“この構成にAIを組み込むことで技術的に優れた効果が得られる”という論理構成を明確に示しましょう。