AI関連発明[第16回]:他社特許への抵触リスクと回避設計のポイント

◆はじめに

AI技術の活用が進む中、自社の製品やサービスが他社の特許権を侵害してしまうリスクにも十分に注意を払う必要があります。特に技術開発のスピードが速く、似たような技術が多数出願されているAI分野では、他社特許との衝突を回避するための戦略的設計が重要です。

1. 他社特許のリスクとは

特許権は、権利者が排他的に技術を実施できる権利であり、第三者が無断でその技術を使用した場合、差止請求や損害賠償請求の対象となります。AI分野では、アルゴリズム、データ処理手法、推論結果の表示方法など様々な要素について出願がなされており、自社技術が意図せず他社特許に抵触するリスクがあります。

2. 特許調査の実施

開発初期段階で、関連技術分野における先行技術調査(特許調査)を実施することが重要です。特に「技術的課題」「構成要素」「作用効果」に着目して、他社の権利範囲と自社技術の違いを明確にしておくことで、将来的なトラブルの予防につながります。

3. 回避設計の具体的手法

他社特許に類似した技術を実施する場合でも、以下のような工夫を行うことで侵害リスクを下げることが可能です:
・他社特許の請求項で限定されている構成を意図的に避ける
・異なる手段や手順で同等の機能を実現する
・他社特許の技術的思想と異なるアプローチを用いる
・公知技術を活用して他社特許との差異を明確にする

4. 自社特許との組み合わせ

他社特許を回避する設計を行った場合には、その回避設計自体を自社で特許出願することで、さらなる模倣防止や交渉材料として活用できます。いわゆる「周辺特許戦略」として、自社の知財ポートフォリオを強化することができます。

5. 他社特許の無効化検討

場合によっては、他社特許が無効理由(新規性欠如、進歩性欠如、記載不備など)を有する可能性もあります。無効資料の収集や、無効審判・情報提供制度の活用も選択肢として検討することが必要です。

◆まとめ

AI技術の実用化においては、自社技術の創出と並行して、他社の権利状況を常に意識した開発が求められます。調査・設計・出願・無効対策など、総合的な知財戦略に基づくリスク管理を行いましょう。