◆AI関連発明の分類と特徴
AIに関する発明といっても、その形態は多岐にわたります。ここでは、特許実務上よく見られるAI関連発明のパターンを紹介します。
AIアルゴリズム発明
AIの学習・推論方法自体に関する発明です。例えば、独自のニューラルネット構造や、最適化手法などがあげられます。
AI応用発明(業務系)
既存のAIを特定業務に応用した発明です。例えば、物流の需要予測AIや、医療診断支援AIなどがあげられます。
AI統合発明(システム系)
AIを既存システムに組み込んだ発明です。例えば、製造装置の異常検知を行う制御システムなどがあげられます。
学習データ活用発明
学習用データの構築・選別・加工に関して工夫した発明です。例えば、自然言語処理用の教師データを生成する方法などがあげられます。
◆日本におけるAI特許の例
すでに多くのAI関連発明が特許になっています。ここでは、具体的な事例をご紹介します。これらの特許は、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を活用した具体的な技術的工夫が認められ、進歩性・新規性を満たしていると判断されたものです。
無人航空機制御システム(生成AIによる動作プログラム生成)
特許権者:ソフトバンクグループ株式会社
特許番号:特許第7628640号
生成AIを利用して複数の無人航空機を同時に制御するためのシステムであり、自然言語の指示を受け取り、AIによって解析された後、無人航空機の動作プログラムを生成します。
商品レビュー要約生成システム
特許権者:楽天グループ株式会社
特許番号:特許第7606028号
ユーザにより投稿された取引対象に対する投稿文を取得し、ユーザにより投稿された取引対象に対する投稿評価結果を取得します。そして、投稿文と投稿評価結果とを言語モデルに送信することにより、投稿評価結果に基づき、かつ、取引対象に対する要約文を取得します。
ケア支援システム(介護プラン自動生成)
特許権者:株式会社ゼロワン
特許番号:特許第7607892号
候補の生成要求を含むリクエストを大規模言語モデルサーバに送信し、送信したリクエストに対して大規模言語モデルサーバから出力される推定結果に基づいて希望の候補を表示します。ケア実施者は、表示された候補からいずれかを選択し、ケア管理表に入力することができます。
◆海外におけるAI特許の傾向と事例
海外では特に米国と中国でAI関連の特許出願が活発です。以下は代表的な事例です。
特許権者:Google(米国)
特許番号:US Patent No. 10,257,319
文の意味をより深く理解できるAIモデルを構築するための事前学習手法を提供するもので、特に、双方向(前後の文脈)から単語の意味を学習することで、従来よりも高精度な自然言語理解を実現するものです。
特許権者:Alibaba(中国)
特許番号:CN106918911A
ユーザーの過去のクリック、検索、購入履歴などを分析し、機械学習アルゴリズムを用いて商品との関連性をスコア化。そのスコアに基づいて、推薦リストを生成します。これにより、ユーザー体験の向上と売上の最大化を図ることができます。
◆まとめ:パターンを知れば出願のヒントになる
AI技術は非常に広範であるため、自社の技術がどの分類に該当するかを理解することで、出願戦略の立案がしやすくなります。また、他社の出願動向や事例を知ることは、自社技術の差別化ポイントを見出す上でも重要です。
自社技術の差別化ポイントが、特許の観点から実際の業務で使用しているシステムの特徴とは別のところに存在する可能性もあります。様々な角度から検討することでAI関連発明の価値を向上させることができるはずです。