AI関連発明[第20回]:これからのAI開発と知財の役割 ― 中小企業が勝ち残るために
◆はじめに AI技術は、今後のあらゆる産業において中核的な役割を果たすことが確実視されています。大企業が潤沢な資金と人材を武器にAI研究を加速させる一方、中小企業もまた、自社の業務や製品にAIを取り入れることで競争力を強化し、新たな市場を切り開くチャンスを得ることができます。 1. 中小企業がAIを活用する意味...
AI関連発明[第19回]:海外展開時のAI特許戦略(米国・中国・欧州)
◆はじめに AI関連技術をグローバルに展開するにあたって、国内での特許取得だけではなく、米国・中国・欧州という主要地域での知財戦略を如何に構築するかが重要です。各地域ごとに制度・審査実務・ライセンス環境が異なるため、それぞれの特徴を理解し、戦略的に対応する必要があります。 1. 米国での戦略ポイント 米国では、United States Patent and Trademark Office(USPTO)によるAI・ソフトウエア関連出願の審査において、35 U.S.C. §101(特許適格性)が重要な論点となります。...
AI関連発明[第18回]:AI特許に関する訴訟事例から学ぶべきこと
◆はじめに AI技術の進展に伴い、AI関連の特許をめぐる訴訟も国内外で増加しています。これらの訴訟事例からは、単なる特許取得だけでなく、特許の活用や管理、契約・ライセンス戦略まで含めた知財戦略全体の重要性が浮き彫りになります。 1. AI関連訴訟の傾向 近年のAI関連特許訴訟には、以下のような特徴が見られます: ・アルゴリズムや推論処理の構成が争点となるケース ・データ処理・機械学習モデルの実装方法に関する侵害主張 ・スタートアップと大企業間での係争が増加傾向 ・学習済みモデルやクラウドAI...
AI関連発明[第17回]:AI関連特許のライセンス活用例と契約の注意点
◆はじめに AI技術の急速な普及により、特許の保有だけでなく、そのライセンスを通じた活用も重要な戦略の一つとなっています。AI関連発明について他社とライセンス契約を締結することで、新たなビジネスモデルの創出や技術連携が可能となる一方、契約上の注意点も多く存在します。 1. ライセンス活用の目的とパターン AI関連特許のライセンス活用には以下のようなパターンがあります: ・自社特許を他社に使用させる(アウトライセンス) ・他社特許を使用する許諾を得る(インライセンス) ・クロスライセンス契約による相互使用...
AI関連発明[第16回]:他社特許への抵触リスクと回避設計のポイント
◆はじめに AI技術の活用が進む中、自社の製品やサービスが他社の特許権を侵害してしまうリスクにも十分に注意を払う必要があります。特に技術開発のスピードが速く、似たような技術が多数出願されているAI分野では、他社特許との衝突を回避するための戦略的設計が重要です。 1. 他社特許のリスクとは...
AI関連発明[第15回]:特許化の限界と、それを補う他の知財手段
◆はじめに AI技術は日進月歩で進化しており、その技術成果のすべてが必ずしも特許で保護できるとは限りません。特許制度には要件や限界が存在し、場合によっては他の知的財産制度や工夫を組み合わせて保護する必要があります。 1. 特許制度の限界 特許として保護するためには、「技術的思想の創作」であること、「産業上の利用可能性」があること、「新規性・進歩性」があることなどの要件を満たす必要があります。しかし、以下のようなケースでは特許化が困難です: ・機械学習による出力結果そのもの(例:文章、画像、予測結果)...
AI関連発明[第14回]:営業秘密と特許のどちらで保護すべきかの判断軸
◆はじめに AI関連技術に限らず、技術的成果をどのような形で保護するかは、知財戦略において重要な判断事項です。特許出願による公開と引き換えに独占権を得る方法と、技術情報を非公開にして秘密として管理する方法(営業秘密)のいずれが適切かは、企業の目的やリスク許容度によって異なります。 1. 特許と営業秘密の特徴 特許は出願・登録によって一定期間の独占権を得られる一方、公開されるため第三者に技術が知られてしまうリスクがあります。一方、営業秘密は登録不要で期間制限がありませんが、秘密管理や漏洩防止措置が不十分だと保護が失われてしまいます。...
AI関連発明[第13回]:アルゴリズム、データ、出力のうち何を守るべきか?
◆はじめに AI関連発明において、特許で保護できる対象として「アルゴリズム」「データ」「出力」が頻繁に登場します。しかし、それぞれの要素には特許適格性や保護範囲の観点から注意すべきポイントがあります。本記事では、これらのうち何を、どのように守るべきかについて解説します。 1. アルゴリズムの保護 アルゴリズムは、理論上の数学的手法である場合、特許の保護対象とはなりません。しかし、そのアルゴリズムが現実のシステムや装置に組み込まれ、技術的課題を解決する手段として機能している場合は、発明として認められる可能性があります。...
AI関連発明[第12回]:拒絶理由への対応パターンとAI技術特有の注意点
◆はじめに AI関連発明の特許出願においては、審査段階でさまざまな拒絶理由が通知されることが少なくありません。本記事では、AI発明に特有の拒絶理由とその対応パターン、そして技術分野特有の留意点について解説します。 1. 拒絶理由の主なパターン 以下に、AI関連出願で頻出する拒絶理由の主なパターンを示します。 (1)特許法第29条第1項:新規性欠如...
AI関連発明[第11回]:審査で問われる「技術的思想」とは何か?
◆はじめに AI関連発明の特許出願において、「技術的思想があるかどうか」は、審査で極めて重要な観点とされます。単なるアイデアやビジネス的手法、またはデータ処理の一形態にとどまる記載は、技術的思想の欠如として拒絶される可能性があります。 1. 「技術的思想」とは何か?...
AI関連発明[第10回]:生成AIや学習済みモデルに関する出願の注意点
◆はじめに 近年の生成AI(Generative AI)技術の発展に伴い、テキスト、画像、音声などを自動生成する技術に関する特許出願が急増しています。また、ChatGPTのような学習済み大規模モデル(LLM)を活用したシステム開発も一般化していますが、これらの技術に関する出願では、従来とは異なる留意点が存在します。 1. 生成AIの“仕組み”と“活用方法”の違いを明確に 生成AIに関する出願では、対象が“生成AIそのもの”か、“生成AIの応用”かで記載すべき内容が異なります。 -...
AI関連発明[第9回]:AI関連特許の出願に必要な技術的説明とは?
◆はじめに AI技術を活用した発明は、特許出願において“技術的説明”が極めて重要です。AIが関与しているからといって、特許庁が自動的に特許性を認めるわけではありません。特に「どのようにAIを使っているのか」「なぜ技術的に意味があるのか」を丁寧に記載する必要があります。 1. 単なる“AIを使っている”という記載では不十分...
AI関連発明[第8回]:他社との共同開発や外注AIモジュールを使う場合の留意点
◆はじめに AI関連技術の開発においては、他社との共同開発や、外部からのAIモジュールの導入が一般化しています。しかし、これらの形態には特許出願や権利化の観点で多くの落とし穴が存在します。本稿では、そのようなケースで注意すべきポイントを解説します。 1. 共同開発における発明者の明確化...
AI関連発明[第7回]:既存システムにAIを組み込んだだけで特許になるのか?
◆はじめに 「既存のシステムにAIを後から追加しただけでは、特許にならないのでは?」という疑問は、AI導入を検討する多くの企業で共通の関心事項です。AIを活用したからといって直ちに特許性が認められるわけではなく、特許出願においては“技術的思想の創作”に該当するか、新規性はあるか、進歩性はあるかなど、厳しく審査されます。 ◆単なるAIの導入だけでは不十分...
AI関連発明[第6回]:AIを一部利用した発明とはどう定義するのか?
◆はじめに 近年、AIを一部に組み込んだ発明が増加しています。例えば、AIが単に数値を予測したり、分類結果を出力する補助的な位置付けで使われているケースです。 このような発明でも、工夫の仕方によっては特許性が認められる可能性があります。本記事では、「AIを一部利用した発明」とは何か、その定義や出願上のポイントを解説します。 ◆AIが一部で利用されるとはどういうことか 「AIを一部利用した発明」とは、全体の構成の中でAIが一部機能として使われているものを指します。 たとえば、以下のようなケースが該当します。 -...
AI関連発明[第5回]:業務へのAI導入を特許戦略にどう位置付けるか
◆はじめに AI技術の導入は、業務効率化や品質向上を目的とした取り組みとして、さまざまな業種で進められています。 しかし、AIを単なる業務改善の手段として導入するだけでは、競合との差別化や技術的優位性を確保することは困難です。 本記事では、業務へのAI導入をどのように特許戦略と結びつけるか、その考え方と実践のポイントを解説します。 ◆AI導入フェーズごとの特許戦略 ここでは、AI導入フェーズを「試験導入・PoC段階」、「実運用段階」、「高度化・差別化段階」の3つのフェーズに分けて説明します。 [フェーズ1:試験導入・PoC段階]...
AI関連発明[第4回]:「AIを使った発明」と「AIそのものの発明」の違いとは?
はじめに AI関連技術の特許を検討する際に、まず押さえておきたいのが、「AIを使った発明(AI適用発明)」と「AIそのものの発明(AIコア発明)」の違いです。両者は、主張すべき発明の観点が異なるため、適切な整理が必要になります。 ◆「AIを使った発明」と「AIそのものの発明」の比較 [AIを使った発明(適用発明)] ・概要:既存のAIを業務やシステムに適用する発明。AIは「手段」として位置づけられる。 ・例:診断支援AIを組み込んだ医療支援システム、需要予測AIを活用した在庫管理システム [AIそのものの発明(コア発明)]...
[判例研究]ドワンゴ対FC2事件~海外での行為を含む特許権の効力と属地主義~
令和7年3月3日、特許権に関する最高裁判決がなされました。今回の判決について、多くの先生方が様々なコメントを寄せられています。ここでは、弁理士試験(特に、論文式筆記試験)の受験生用に、本事件のポイントを説明したいと思います。 1.事件の概要 この事件は、特許権者であるドワンゴ(原告)が、米国法人であるFC2および日本法人である株式会社ホームページシステム(以下、単に「FC2」と記します。)に対し、FC2が運営する動画配信サービス「FC2動画」において、ドワンゴの持つ特許権を侵害しているとして訴訟を提起したものです。...
AI関連発明[第3回]:AI関連発明のパターンと国内外における特許例
◆AI関連発明の分類と特徴 AIに関する発明といっても、その形態は多岐にわたります。ここでは、特許実務上よく見られるAI関連発明のパターンを紹介します。 AIアルゴリズム発明 AIの学習・推論方法自体に関する発明です。例えば、独自のニューラルネット構造や、最適化手法などがあげられます。 AI応用発明(業務系) 既存のAIを特定業務に応用した発明です。例えば、物流の需要予測AIや、医療診断支援AIなどがあげられます。 AI統合発明(システム系)...
AI関連発明[第2回]:AIと特許の関係 ― そもそも何が守れるのか?
◆AI技術は特許の対象になるのか? 「AI技術は特許で守れるのか?」という質問をよく耳にします。答えは、「一部は守れるが、一部は守れない」です。 AIに関する発明が特許として認められるには、特許法上の要件を満たす必要があります。単なるアイデアや数式的な手法ではなく、技術的な課題を解決する手段として構成された場合に特許化の可能性があります。...
AI関連発明[第1回]:なぜ今、AI技術の特許出願が重要なのか?
◆「AI活用」はもはや特別ではない時代へ 近年、生成AIや機械学習などの技術が爆発的に普及し、「AIを活用した業務改善」や「AIを組み込んだサービス開発」は、大企業のみならず中小企業にとっても現実的な選択肢となりました。 しかし、「AIを活用したからといって、すぐに差別化できる時代」は終わりつつあります。同業他社も同様にAIを使い始め、すぐに模倣可能な機能やサービスでは競争優位は保てません。 では、どうすればAIを活用した技術やサービスを真に自社の資産にできるのか? その答えのひとつが、「AI関連特許の取得」です。...
事務所移転のお知らせ
このたび弊所を下記へ移転いたしました。 これを機に一層の研鑽を重ね、皆様のお役に立つ質の高い弁理士業務に努めてまいる所存でございます。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。 新住所 〒104-0031 東京都中央区京橋一丁目十四番四号 京橋TSビル八階...
ホームページをリニューアルしました
このたびホームページをリニューアルいたしました。 お問い合わせはこちらのフォームからお願いいたします。